労働者派遣法

 派遣で働く労働者の権利を守るため、派遣会社や派遣先企業が守るべきルールを定めるが、問題も多い

◇ 労働者派遣法 とは? ◇ 

 労働者派遣法とは、正式名称を「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備に関する法律」といいます。派遣で働く労働者のため、派遣会社や派遣先企業が守るべきルールを定めるというのが名目ですが、その実態は、派遣労働者の権利が守られるとは程遠いものとなっています

 もともと、労働者を派遣することは「労働者供給事業」であるとし、職業安定法第44条で禁じられています。

労働者供給事業とは

労働法の基本原則の一つは、直接雇用・間接雇用禁止です。

 労働者供給事業とは、いわゆる「人貸し」のことで、何人かの労働者を自らの支配下に置き、労働力を必要とする事業主からの依頼を受けて、労働者を貸し出すことをいいます。

 職業安定法第5条に、「供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させること」と定義されています。

 戦前、まだ日本で労働法が充分整備されていなかった時代には、労働者を食い物にする悪質な働かせ方が横行していました。また、工場法(労働基準法の前身)が普及して、最低の労働条件が定められ、健康保険加入が義務づけられると、企業はこうした法律の適用を嫌い、労働者を直接雇用せずに「人夫供給業」などから受け入れる「間接雇用」の形態が広がりました。こうして、供給先企業は、法律上の使用者責任を負うことなく思うままに労働者を使い、労働者は、供給先では人権無視の劣悪な条件で働かされ、供給元からは賃金の上前をはねられました。

 戦後間もなく(1947年)、戦前のこういった労働実態を克服するため制定された職業安定法では、この労働者供給事業が明確に禁じられました。第44条では「何人も、労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない」と規定されています。

[禁止されている労働者供給事業]



 しかし、日本の経済社会活動や、個々の労働者の働き方が多様化する時代の動きに対応し、特に使用者側の強い要求によって、労働者派遣事業を制度化したのが労働者派遣法です。当初は臨時的一時的な業務(16の専門的業務)においてのみ認められていました。つまり、「原則禁止、例外容認」のポジティブリスト方式です。

 ところが、規制緩和によって対象業務は拡大され、1999年改定で「原則容認、例外的に規制する業種を定める」ネガティブリスト方式に改められ、2003年改定では、ごく一部の業務を除いてほぼ全ての業務で労働者派遣が認められるようになりました。

 この規制緩和により、労働現場では数多くの問題が起こり、労働者派遣法自体の見直しが強く叫ばれています。

上へ  ホームへ

◇ 請負・出向・派遣 ◇ 

 どれも「他の会社で仕事をする」というイメージのため、似たようなものと思いがちですが、法律的には明確な区別があります。
 請負や出向をよそおった違法派遣で働かされることのないためにも、この違いを理解しておく必要があります。

【 請 負 】             

 請負業者は、注文主から仕事を受注すると、自社の資金で、自社の機械や設備を使って、自社の労働力で、自社の仕事を完成させます。つまり、注文主はただのクライアントで、請負で働く労働者に対して、雇用関係も指揮命令関係も持ってはいないのです。
 注文主が請負業者の労働者に対し指揮命令を行うと、偽装請負となり、労働者派遣法に違反します。



【 出 向 】在籍出向と転籍出向があります。

[在籍出向]

 出向元との雇用関係を維持したままで、出向先と新たな雇用関係に入る形態です。雇用契約の一部と指揮命令権が出向先に移ります。親会社子会社間や関連会社等のグループ企業間で、人事異動や技術指導等、出向の実質的な必要性が認められる場合のみ有効というのが出向の本来の趣旨ですが、派遣会社が労働者を出向契約で派遣するという違法派遣も摘発されています。

[転籍出向]

 出向元との雇用契約関係と指揮命令権が、すべて出向先に移転する形をさします。出向元には、職業紹介事業の許可が必要です。




【 派 遣 】        

 派遣会社が、雇用関係のある派遣労働者を、派遣先と結んだ派遣労働契約に基づいて、派遣先の指揮命令の下で就労させる形です。実際に働いている派遣先と派遣労働者の間には、雇用関係がありません。すなわち、自分の雇い主でない者の指示を受けて働く形をさします。
 派遣先が、派遣会社から受け入れた派遣労働者を、さらに別の会社に派遣する二重派遣は、労働者供給事業にあたり、職業安定法に違反します。



上へ  ホームへ

◇ 労働者派遣法に定められていること ◇ 
  • 派遣の事業形態(第2条) 

    1)一般労働者派遣事業(登録型)
     労働者は派遣会社に名前を登録しておき、仕事があった時、その期間(派遣期間)派遣会社と雇用契約を結んで派遣先企業で働く形態です。
     一般労働者派遣事業を行うには、厚生労働大臣の許可を受ける必要があります。
     派遣期間が終われば雇用契約も終了するなど、雇用形態が不安定で、細切れ派遣や日雇い派遣など、派遣に関する問題のほとんどが、この一般労働者派遣事業をめぐって生じています。

    2)特定労働者派遣事業(常用型)
     労働者は派遣会社に常時雇用されていて、派遣先で働く形態。ほとんど派遣されている場合と、派遣されるのはまれで、普段は派遣会社で働いている場合があります。派遣されていない時も、派遣会社の社員としての地位は継続するため、労働者の雇用形態は安定しています。
     特定労働者派遣事業を行うためには、厚生労働大臣に届出をし、受理される必要があります。

    上へ  ホームへ

  • 派遣を行ってはならない業務(第4条) 
    1)港湾運送業務
    ?[y??Z????v8
    ?[z?????q???v8
    4)医療関係の業務(紹介予定派遣の場合、または、社会福祉施設等において行われる業務を除く)

     その他、弁護士、司法書士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、管理建築士等の業務や、人事労務管理等で、労使協議の際使用者側の直接当事者として行う業務も派遣が禁止されています。

    上へ  ホームへ

  • 雇い入れに関して(労働条件・就業条件の明示) 
     労働基準法第15条には、使用者が労働契約を結ぶ際には、賃金、労働時間その他の労働条件を文書で明示することと定められています。これはもちろん派遣会社が派遣契約を行う際にも適用されます。また、派遣先で派遣就業する場合の労働条件は、この範囲内となります。

    「労働条件通知書」に記載される主な内容」
               ※ 詳細は、「労働基準法」のページ参照

    契約期間
    就業場所
    業務内容
    始業時刻、終業時刻、休憩時間、所定時間外労働等
    休日
    休暇
    賃金
    退職に関する事項(定年、自己都合退職の手続き、解雇の事由および手続き)
    社会保険、雇用保険
     さらに、派遣スタッフが実際に派遣先で働く際には、派遣会社は派遣先企業との間で結ばれた労働者派遣契約の内容に沿って「就業条件明示書」を作成し、派遣スタッフに就業前に文書で渡しておかなければなりません。

    「就業条件明示書」に記載される主な内容」

    業務内容
    就業場所
    指揮命令者
    派遣期間(+派遣先が派遣受入期間の制限に抵触する日)
    就業日・就業時間・休憩時間
    安全および衛生(責任者等)
    時間外労働および休日労働
    派遣元責任者・派遣先責任者
    福利厚生施設の利用等
    苦情の処理・申出先
    派遣契約解除の場合の措置(途中解除の場合の補償等)

    上へ  ホームへ

  • 事前面接の禁止(第26条) 
     派遣先企業は、派遣されるスタッフを就労に先立って面接したり、履歴書を送付させたりすることはできません。派遣先と派遣スタッフとのマッチングを決定できるのは、派遣会社と派遣スタッフ本人の意思だけなのです。
     ただし、紹介予定派遣については、派遣先企業が正社員雇用を前提としていることに配慮して、事前の履歴書提出や面接が認められています。

    紹介予定派遣とは
     派遣先企業への職業紹介を予定して派遣する形態です。派遣期間は最長6ケ月で、派遣先企業と派遣スタッフの“希望が合えば”派遣先が派遣スタッフを直接雇用します。
     派遣会社には職業紹介事業の許可が必要です。
     直接雇用を想定しているため、派遣先には派遣スタッフとの事前面接も履歴書取得も容認されています。
     しかし実態は、6ケ月働いた後、“希望が合わず”直接雇用されずに契約終了となるケースが多いのが現状です。

    上へ  ホームへ

  • 労働基準法等の適用(第44~47条) 
     労働関係法(労働基準法・労働安全衛生法等)については、原則として派遣会社が雇用主として責任を負いますが、派遣スタッフと雇用関係のない派遣先企業にも、一部責任を負う事項があります。労働基準法に関する主なものは以下のとおりです。

    派遣会社が責任を負う事項 派遣先企業が責任を負う事項
    均等待遇 均等待遇
    男女同一賃金の原則
    強制労働の禁止 強制労働の禁止
    労働契約 公民権行使の保障
    賃金 労働時間、休憩、休日
    時間外・休日、深夜の割増賃金 年少者に対する労働時間、休日、深夜業
    年次有給休暇
    産前産後の休業 産前産後の時間外、休日、深夜業
    災害補償 育児時間
    就業規則 生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置

    上へ  ホームへ

  • 派遣先の構ずべき措置(第39~43条) 
     また、上記とは別に、派遣先企業には、次の15項目が構ずべき措置として義務づけられています。

    1)労働者派遣契約に関する措置
    2)適正な派遣就業の確保
    3)派遣受入期間の制限の適切な運用
    4)派遣労働者への雇用契約の申込み義務
    5)派遣労働者の雇用の努力義務
    6)派遣先責任者の選任
    7)派遣先管理台帳
    8)労働・社会保険の適用の促進
    9)関係法令の関係者への通知
    10)派遣労働者を特定することを目的とする行為の禁止
    11)性別・年齢による差別取扱いの禁止等
    12)紹介予定派遣
    13)派遣労働者の判断で行う派遣就業開始前の事業所訪問等
    14)派遣先が講ずべき措置に関する指針
    15)派遣労働者の雇用の安定等を図るために派遣元事業主および派遣先が講ずべき措置に関する指針
     さらに、セクシュアル・ハラスメント産前産後の健康管理に関しては、派遣会社と派遣先企業の双方が措置を構ずることと定められています。

    上へ  ホームへ

  • 政令で定める専門職26業務 
     派遣期間は原則1年、最長3年までと定められていますが、専門性の高い以下の26業務などで労働者派遣を行う場合は、派遣期間の制限がありません。

    1号:情報処理システム開発
    2号:機械設計
    3号:放送機器操作
    4号:放送番組の制作
    5号:機器操作
    6号:通訳、翻訳、速記
    7号:秘書
    8号:ファイリング
    9号:調査
    10号:財務
    11号:貿易
    12号:デモンストレーション
    13号:添乗
    14号:建築物清掃
    15号:建築設備運転等
    16号:案内・受付、駐車場管理等
    17号:研究開発
    18号:事業の実施体制の企画、立案
    19号:書籍の制作・編集
    20号:広告デザイン
    21号:インテリアコーディネーター
    22号:アナウンサー
    23号:OAインストラクション
    24号:テレマーケティングの営業
    25号:セールスエンジニアの営業、金融商品の営業
    26号:放送番組等における大道具・小道具
     ただし、派遣契約が終了した時、次の要件を満たす場合は、派遣先企業には派遣スタッフを直接雇用する努力義務が生じます。
    1. 就業場所ごとの同一業務について、継続して1年以上、派遣可能 期間終了までの間、同じ派遣スタッフを受け入れていた場合
    2. 引き続き、同じ業務に従事させるため、労働者を雇い入れようと する場合
    3. 派遣実施期間終了の日までに、派遣先企業に雇用されてその業務に従事したいと、派遣先に申し出た者
    4. 派遣終了日から7日以内に、派遣会社との雇用関係が終了する者

     また派遣先企業は、次の場合、派遣スタッフに対し、直接雇用の申込みの義務があります。
    1. 派遣受入期間の制限がある業務
       派遣受入期間の制限への抵触日以降も派遣労働者を使用しようとする場合は、派遣先は、抵触日の前日までに、希望する派遣スタッフに対し、直接雇用契約の申込みをしなければなりません。
    2. 派遣受入期間の制限がない業務
       3年以上同じ派遣スタッフを受け入れている派遣先が、その業務に新たに直接雇用の労働者を雇い入れようとする時は、その派遣スタッフに対し、優先的に雇用契約の申込みをしなければなりません。

      上へ  ホームへ

  • 契約解除 
     派遣先企業は、正当な理由なく派遣契約を途中で打ち切ることはできません
     また、経営都合など正当な理由によるものであっても、派遣スタッフに責任のない契約解除の時には、
    1. 契約解除を少なくとも30日前までに申し入れるか、解雇予告手当を支払うこと。
    2. 派遣会社と派遣先企業とで協力して、契約解除される派遣スタッフが他の仕事を得られるよう努力すること。
    3. 派遣会社への損害賠償等の支払いが必要となります。(具体的には、「就業条件明示書」に記載されます。)

      上へ  ホームへ